クリスマスのつぼ
作・絵:ジャック・ケント
訳:清水 真砂子
出版社:ポプラ社
ひびがはいったつぼは、なかまのつぼがきれいに色をつけてもらったり、町に運ばれていったりするのを、いつもうらやましくながめていた。ところがある日・・・。
引用元:ポプラ社公式ページ(https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/2260004.html)
メキシコの楽しいクリスマスが舞台のお話です。
つぼ作り名人のホアン・ゴメスさんが2つのそっくりなつぼを作りました。
ですが片方のつぼは焼いている間にひびが入ってしまい、売り物にならない状態に…。
ひびの入ったつぼは、かわいそうなことに庭の隅っこにおしやられてしまいます。
つぼを通して人の気持ちを考えるきっかけを作るステキな絵本です。
ひびの入ったつぼにもしも心があったなら…
かわいそうに、もしも つぼに こころがあったら、その こころにも きっと ひびがいったことでしょう。
とても気になる絵本の一文です。読み聞かせする子ども達につぼの気持ちをどんなふうに伝えるか。
つぼの気持ちを子ども達に考えてもらうにはどんな言葉をかけると良いのか。
「つぼ、かわいそうね。」「つぼさん、泣いてるかな?」という言葉に反応してくれる年齢の子ども達には、しっかりと気持ちの受け止めが出来るように読み聞かせを進めましょう。
それよりも小さい子ども達には、単純に「かわいそうね。」で良いかもしれません。
水汲みに使われるもう1つのつぼとひびの入ったつぼ
市場へつぼを売りに行くお父さんを見送るひびの入ったつぼ。
一方、売られる予定だった一緒に作られたもう1つのつぼはというと。
ゴメスさんの奥さんが水汲みに使うつぼにちょうどいいと、結局売られることはありませんでした。
毎日井戸からの水汲みに使われるもう1つのつぼ。
そんなつぼを見つめながら
「ぼくみたいな できそこないの つぼでは、だれの やくにも たてやしない。」
と庭の隅で深いため息をつくのでした。
ひびの入ったつぼはクリスマスのつぼに大変身!
そんなひびの入ったつぼにもついに出番が!
クリスマスのピニャータにピッタリだ!とゴメスさんの娘がひびの入ったつぼを持ち出したのです。
ピニャータとはメキシコのお祝い事で使われる、くす玉のような物。
最近ではメキシコから世界へとその文化が広まっています。
祭りとピニャータピニャータはメキシコのお祝い事によく使われる日本のくす玉のようなもので、紙で作られた型枠の中にキャンディ…
クリスマスのピニャータとして自分もやっと人の役に立てる!とひびの入ったつぼは大喜び。
ひびの入ったつぼはかわいい牛型のピニャータに大変身!
読み聞かせしている子ども達とも「やったね!」「よかったね!」と嬉しい気持ちを感じましょう。
クリスマス当日!ひび入ったつぼの運命は…?
そしてクリスマス当日、牛型のピニャータに変身したつぼの出番です。
ですが、ピニャータは子ども達が棒などを使い割ることで中に入っているお菓子をもらう行事。
せっかくクリスマスのピニャータに変身し、人の役に立てることを喜んでいたつぼは、あっという間に粉々になってしまいました。
がっかりなつぼ、かわいそうなつぼ…。
読み聞かせしている子ども達とも、つぼの気持ちを共有することが大切ですね。
どんな言葉で慰めてあげようか?
「悲しまないで!」「子ども達は喜んでいたからいいよね!」など、読み手の方から言葉を提示してあげることも必要です。
ゴミ捨て場で再会した2つのつぼが交わした大事な言葉
粉々になってゴミ捨て場に捨てられてしまったひびの入ったつぼ。
そこに持ち込まれたのは同じ日に作られ、水汲みに使われていたもう1つの立派なつぼ。
立派なつぼが割れてしまったことにひびの入ったつぼが驚いていると、
「なんだって いつかは こわれるんだよ。」
と、立派なつぼのかけらが言います。
「ぼくたち、おんなじように うまれて、おんなじように おわったんだね。」
同じ日に作られて同じように捨てられてしまった2つのつぼ。
「それで めいめい やくに たったんだね。」
「そうだよ。だれだって みんな そうなんだ。」
みんな同じ、誰かの役に立つ!とても良い言葉ですね。
つぼが作られて壊れるまでのお話の中に、人として生きていく上で、自分を大切に思うことや相手を大切に思うことをしっかり教えてくれる絵本です。
大切に読み聞かせしてくださいね。
にじいろランド四日市園
保育士 みちよ先生